わずか6名のギター工房に、エアロスミスのジョー・ペリー本人が電話をかけて、直接ギター制作を依頼する──そんなことが実際に起きている。ジョー・ペリーだけではない。ジョー・ウォルシュ、スティーヴン・スティルスなどアメリカのトップ・プロが顧客リストに名を連ねる注目の工房が、RS GUITARWORKS(RSギターワークス)だ。ここ日本ではまだ十分に認知されていない、比較的新しい工房だが、なぜこのブランドが、トップ・プロの心をつかむのか。その秘密を探ってみよう。
RS GUITARWORKSの本当の凄さは、スペックだけでは伝わりにくい。そこで今回、ギタリストの野村義男氏に試奏を依頼し、その感想を語ってもらった。その時の模様を、さっそく動画で紹介していこう。
59年~65年製の、いわゆる“グリーンガード”のストラトキャスターをベースに設計されたCONTOUR GREENGUARD。特定の年代のギターのコピーではなく、幅のある年代のビンテージ・ギターから素晴らしい部分をまとめ上げた“現代のギター”に仕上がっている。70/75アルミニウムを用いたオリジナルのトレモロ・ブロックは、このギターならではの鳴りの良さに一役買っている。
野村:「こんなに素直な音がするギターと、久しぶりに出会えた気がするね!最近はエフェクタ―で色付けすることを前提としたギターも少なくないけど、これは何も繋がずにそれだけでいい音がする。本来、エレキギターってこんなにいい音なんだって、素直に感動できるギターだね。
リア・ピックアップの音を中心に試奏したけど、フロントはフロントの甘い音が、ハーフ・トーンは独特の鈴なりの音がしっかりと出るから、弾きながらピックアップを変える意味があるギターです。
ネックのグリップは、太め。でも太すぎる感じではなく、むしろ安心感がある。サウンドも弾き心地も“大人仕様”だけど、むしろ若いプレイヤーに弾いて欲しいな。これを手にすれば、ギターという楽器の素晴らしさを体感できるから。」
▲CONTOUR GREENGUARD / オープンプライス(市場実勢価格:399,000円)
【Specification】
●コンディション:Road Warrior(ヘヴィ)●カラー:サンバースト●ボディ:アルダー●ネック:メイプル/ローズウッド指板●ネック・シェイプ:63C●フレット:ジェスカー(6105サイズ)●ピックアップ:リンディ・フレーリン・カスタム・セット●エレクトロニクス:RSスーパーポット,CTSオーディオ・トーン,CRLスイッチ,スイッチクラフト・ジャック,RS /Jensen Guitar Cap●ブリッジ:カスタムRS with Vintage Saddles and Springs●ペグ:トーンプロス・クルーソンズ●ハードウェア:エイジド・ニッケル
51年~54年製の、いわゆる“ブラックガード”のテレキャスターをベースに設計されたSLAB BLACKGURD。材の良さや厳選されたパーツ、マイナスで統一されたネジ類、そしてこだわりのエイジド加工など、本家ビンテージへのリスペクトが感じられる仕上がり。極太でありながら握りやすいネック、驚くほど軽いボディなど、素材の良さがよくわかる。オリジナルのブリッジによるピッチの良さはビンテージ以上だ。
野村:「これは素晴らしい!欲しいです(笑)。ビンテージ・ギターを弾いているような感動がある。ビンテージ・ギターはよほどしっかり調整されていないと実用には難しいところがあるんだけど、これは完璧にセッティングされたビンテージと同じ感覚で使えますね。
サウンドも素晴らしくて、特に好きなのはピックアップ・セレクターをセンターにした時の音。アンプを通さず弾いた時のアコースティック・ギターのような鳴りをそのままアウト・プットしていて、コードを弾いた時の空気感が最高にいいです。
ネックは自分がこれまで弾いてきたビンテージよりもさらに太いけど、手にフィットする感覚が絶妙で、弾きにくさは全くない。むしろ、コードを気持ちよく弾かされちゃう感じ。ボディも非常に軽量で、弾いていて楽ですね。ネジが全部マイナスで統一されているような拘りも、嬉しいポイント。本気で作っている気持ちが伝わってきますね。」
▲SLAB BLACKGUARD II / オープンプライス(市場実勢価格:399,000円)
【Specification】
●コンディション:Road Warrior(ヘヴィ)●カラー:バタースコッチ●ボディ:アッシュ●ネック:1ピース・メイプル●ネック・シェイプ:56V●フレット:ジェスカー(6105サイズ)●ピックアップ:リンディ・フレーリン・ブロードキャスター・セット●エレクトロニクス:RSスーパーポット,CTSオーディオ・トーン,CRLスイッチ,スイッチクラフト・ジャック,Luxe/RS Cap●ブリッジ:RS/Glendale Vintage with ブラス・サドル●ペグ:トーンプロス・クルーソンズ●ハードウェア:エイジド・ニッケル
フライングVとテレキャスターが合体したデザインが、一目見たら忘れられない強烈な存在感を醸し出すTEE VEE BLACKGUARD。RS GUITARWORKSを象徴する1本だ。ブリッジ周りやピックガードだけではなく、ボルトオン・ジョイントを採用しているところまでテレキャスターっぽい。しかし、コントロール周りはボリュームが手元に来るよう配置するなど、細やかな心配りが感じられる。
野村:「今回、1番弾いてみたかったギターが、これ。ギブソンとフェンダーを混ぜちゃったようなこのコンセプトが、最高にいいね!個人的にグッド・デザイン賞をあげたいです。
フライングVって、メタル用ギターってイメージが強いでしょう?でも実はブルースを弾いても素晴らしいギターなんだよね。で、フライングVがブルース用に進化していったら、その最終形がこれかもしれない。フロント・ピックアップの音なんか粘りがあって最高に色っぽいもん。
もちろん、リア・ピックアップでロックっぽいリフを弾いても、センターにしてファンキーな感じで弾いてもいい感じです。とにかくこの見た目から、トゥワンギーなサウンドが出てくるのが、凄く新鮮だよね。ただ、SLAB BLACKGUARDと同じ音かというと、それとも少し違う。独特なルックスと、独特な響きを持ったギターです。」
▲TEE VEE BLACKGUARD / オープンプライス(市場実勢価格:399,000円)
【Specification】
●コンディション:Played But Loved(ミディアム)●カラー:バタースコッチ●ボディ:アッシュ●ネック:1ピース・メイプル●ネック・シェイプ:56ソフトV●フレット:ジェスカー(6105サイズ)●ピックアップ:リンディ・フレーリン・カスタムTee Veeセット●エレクトロニクス:RSスーパーポット,CTSオーディオ・トーン,CRLスイッチ,スイッチクラフト・ジャック,RS Modern Guitar Cap●ブリッジ:RS/Glendale Vintage with ブラス・サドル●ペグ:トーンプロス・クルーソンズ●ハードウェア:エイジド・ニッケル
フェンダーのジャズマスターをリスペクトしたSURF MASTER 57。ジャズマスター特有のキレのあるピックアップやトレモロ・ユニットはそのままに、ローラー・ブリッジの採用、プリセット・トーンの排除とシリーズ/パラレル切り替えスイッチの搭載など、より実用的な設計となっている。当時は存在しないはずの2トーン・サンバーストと、アノダイズド・ピックガードにまで施されたエイジド処理が、独特な雰囲気を醸し出している。
野村:「こんなに安心感があるジャズマスター系のギターは、初めてかもしれない。大抵、ブリッジ周りに不安があるんだけど、これはローラー・ブリッジを採用しているせいか、アーミングをしてもチューニングはばっちり。アームはストラトとムスタングの中間的なニュアンスで、安心して使える。サーフ系の音楽にはもちろん最高だけど、それだけじゃもったいないな。いろいろな音楽に対応できるギターですよ。
ピックアップも抜けが良くて素晴らしいね。どんなアンプに繋いでもこの音が出せそう。スウィートスイッチと呼ばれるスイッチが付いていて、どちらの音も好きですね。
エイジド処理の質感も素晴らしいです。これは、サンバーストの赤みが飛んだ個体の色を再現しているのかな?いい色ですね。サウンドも色味も、弾いているうちにさらに味わいが出てきそう。」
▲SURF MASTER 57 / オープンプライス(市場実勢価格:420,000円)
【Specification】
●コンディション:Played But Loved(ミディアム)●カラー:2トーン・サンバースト●ボディ:アッシュ●ネック:メイプル●ネック・シェイプ:ソフトV●フレット:ジェスカー(6105サイズ)●ピックアップ:リンディ・フレーリン・ビンテージ・ジャズマスター●エレクトロニクス:RSスーパーポット,CTSオーディオ・トーン,スイッチクラフト・ジャックandスイッチ,Luxe/RS Cap●ブリッジ:ローラー・ブリッジand ビンテージ・トレモロ●ペグ:トーンプロス・クルーソンズ●ハードウェア:エイジド・ニッケル
ファイヤーバードとテレキャスターが合体したデザインのTEE BYRD 60's。コンセプトとしてはテレとVが合体したTEE VEE BLACKGUARD に近いが、そのサウンドはさらに独特だ。ボディ・シェイプやリバース・ヘッド、フロントのミニ・ハムバッカーはファイヤーバードの系統だが、テレキャスター・タイプのブリッジ、リア・ピックアップ、コントロール類、そしてボルトオン・ジョイントを採用したことで、両者が合体したオリジナルのギターとなった。
野村:「これはもう、文句なしにかっこいいギターですね。これを持ってステージに立ったら、他のバンドや自分のバンドのメンバーじゃなく、このギターがライバルになっちゃう。その意味で、負けたくないギターですね(笑)。
ファイヤーバードの形だけどデタッチャブル・ネックだし、フロントはファイヤーバードのミニハムだけどリアはテレキャスだし、弾く前はどうなんだろうと思ったけど、全然問題ないです。むしろピックアップのバランスはいいし、凄く弾きやすい。フロントもリアも音が立っているから、バッキングもソロも、どっちでもいけますよ。
リバース・ヘッドで6弦側の弦長が長いから、テンションも独特で、ジミ・ヘンを弾いてもいい感じですね。とにかく一見扱いにくそうなのに、実はすごく楽器として完成度が高くて、そのうえで“どう弾いてくれる?”と問いかけてくるようなギター。」
▲TEE BYRD 60's / オープンプライス(市場実勢価格:420,000円)
【Specification】
●コンディション:Played But Loved(ミディアム)●カラー:オリンピック・ホワイト/イエロード●ボディ:アルダー●ネック:メイプル/ローズウッド指板●ネック・シェイプ:63C●フレット:ジェスカー(6105サイズ)●ピックアップ:Tom ShortsカスタムTee Byrdセット●エレクトロニクス:RSスーパーポット,CTSオーディオ・トーン,CRLスイッチ,スイッチクラフト・ジャック,RS Modern Guitar Cap●ブリッジ:RS/Glendale Vintage With スティール・サドル●ペグ:トーンプロス・クルーソンズ●ハードウェア:エイジド・ニッケル
ジョー・ペリーのアイデアを元に完成させたオリジナル・モデルのBULLETS AND BONESの兄弟機種であるSOLARFLAIR。ボディ・トップに張られたドクロ・デザインのアルミが強烈な存在感を放つ。ボディは軽量化と鳴りの向上を目指してチェンバー加工が施され、ネック・ジョイントもRS GUIARWORKSとしては珍しく、セットネック・ジョイントが採用されている。リンディ・フレーリンとTVジョーンズのピックアップの組み合わせも新しいサウンドを生んでおり、フェンダー系のサウンドをリスペクトする機種が多いRS GUITARWORKSの中では異色のモデルだ。
野村:「このギターは、アルミのプレートが貼ってあってイカツイ感じがするけど、実は変な暴れ方をしない、すごく優秀なギター。ハイの痛い感じがないし、ノイズも少ない。エフェクターの乗りもよさそう。仕事で即使えるね。見た目が華やかだし、照明が多い場所でもノイズに強いから、大きなステージが似合うだろうね。ボディが少し小ぶりで、バランスがいいから、小柄な人が持っても凄くかっこいいと思う。
コードを弾いた時の振動がすごく心地いいね。これはやっぱりチェンバー・ボディなのと、この分厚いオリジナルのブリッジが効いているんでしょう。フロントのP-90が元気で、リアのハムバッカーとのバランスもいいね。全体に、気持ち良くリミッターが掛かっているようで、凄く弾きやすいよ。ネックの握りも、指に負担がないから、細かいフレーズからロックなリフまで、自然に弾かされるね。」
▲SOLAR FLAIR / オープンプライス(市場実勢価格:682,500円)
【Specification】
●コンディション:Under The Bed(ライト)●カラー:OXブラッド●ボディ:マホガニー●ネック:セット・マホガニー/ローズウッド指板●ネック・シェイプ:FAT C●フレット:ジェスカー(6105サイズ)●ピックアップ:リンディ・フレーリン HUM-CANCELING P-90&TVジョーンズ●エレクトロニクス:RSスーパーポット,CTSオーディオ・トーン,CRLスイッチ,スイッチクラフト・ジャック,Luxe/RS Cap●ブリッジ:RS Sustainmaster Bridge With アルミニウム&ブラス・サドル●ペグ:ヒップショット●ハードウェア:エイジド・アルミニウム/クローム
シェリル・クロウ、ブルース・スプリングスティーン、リッチー・サンボラ等、アメリカ本国では著名ミュージシャンが多数使用する65AMPS。今回の試奏では、全てのギターが20Wの新モデル『Ventura』に直結された。
【Specification】
●アウトプット:20ワット●チューブ:2×6V6、1×EF86、1×12AT7、1×12AX7●コンボ・スピーカー/Celestion G12H30●パネル・コントロール/マスター・ヴォルテージ(パワー管の電圧調整による音量調整)、トーン、ボリューム、クリーン・チャンネル(EF86)・ダーティー・チャンネル(12AT7)切り替えスイッチ(フットスイッチ連動)、バンプ・スイッチ(ブースト・スイッチ/フットスイッチ連動)
野村:「弾いてみる前は、どれも同じような傾向なのかと思っていたけど、実際に弾いてみると1本1本個性が違うね。共通している点は、どれもすごくしっかり作られていること。弾いていて凄く安心感があるし、そのうえで遊び心があるところも好きですね。
エイジド加工も凄く丁寧に処理されていて、こだわりが感じられます。もう傷付けるのがもったいないくらい(笑)。でも、このギターを弾きまくって、さらに自分の年輪を刻んでいくのもいいんじゃないかな。
どのギターも良かったけど、個人的にスタジオの仕事で使ってみたいのはTEE BYRD 60's。見た目もかっこいいんだけど、ミニハムのフロントとテレ・タイプのリアの音が素晴らしかった。ライブの仕事なら、華やかでノイズにも強いSOLAR FLAIR。単純に、欲しいのはSLAB BLACKGUARD II。これはもう、全てがしっくりきたとしか言いようがないです。調子の悪いビンテージを使うなら、こっちの方がいいでしょう。どのギターも十分オススメできる内容ですが、どれを弾く場合でも、まずはエフェクターを繋がずに本来の良さをじっくり味わってみてほしいですね。」
【Profile】
のむら・よしお。1964年10月26日・東京都出身。1975年、姉の影響でフォークギターを手にする。1979年芸能界デビュー。1983年『The Good-Bye』結成、 シングル「気まぐれONE WAY BOY」でデビュー。(1990年The Good-Bye活動休止、2003年再開)
現在は、浜崎あゆみバンド、世良公則GUILD 9、宇都宮隆U_WAVEなどに参加。自身のバンド、RIDER CHIPS、三喜屋・野村モーター's BANDでTOURを行う。ギタリスト、プロデューサーとして幅広いジャンルにて活動中。