一昨年、圧倒的クオリティの音源モジュールDTX900をはじめとしたDTXシリーズのフラッグシップ・モデルが発表されたが、昨年、音源のクオリティや静粛性で話題となった新素材のDTX-PADはそのまま、ラックを新開発、操作の簡便性も追求し、かつ大幅なコストダウンをも実現したモデル、DTX700シリーズが発表された。ここでは新しく開発された新音源DTX700の魅力を中心に、電子ドラムはもちろんデジタル機器にも詳しい山本雄一が解説。また番外編としてエレドラの素朴な疑問に答えるQ&Aも是非チェックしてほしい。
▲DTX700(¥68,250)[拡大画像を見る]
DTX700シリーズ用に開発された音源モジュール。アコースティック・ドラム、パーカッション、シンセサイザー系など上位機種のDTX900を上回る計1396種類の音色を内蔵。
DTX700には、なんと上位機種DTX900を上回る計1396種類もの音色が内蔵されています。内訳は、アコースティック・ドラム、クラシック・パーカッション、エスニック系やエレクトロニック系など、多岐に渡るドラム&パーカッション音色が1268種類、シンセサイザー系の音色が128種類。ありとあらゆる打楽器類を網羅しているだけでなく、単体で打ち込み用音源としても使えるクオリティですね。“ドラマーは機械に弱い”という時代ではありませんが、瞬時にいろいろな操作が求められるパートであることには違いないでしょう。そこでこのDTX700は、操作のしやすがあくまでドラマー目線なのもうれしいところ。これまでは面倒にも思えた作業が非常にわかりやすい構造になっており、目的に向けて最小限のボタン操作で到達できるようにプログラムされているのがわかります。とはいえ、やる気さえあれば、深い階層にもぐってイジり倒すことももちろん可能です。
この他にも“グルーブチェック機能”、“リズムゲート機能”、“メジャーブレイク機能”などのトレーニング機能や、いろいろなジャンルの音楽に合せて練習できる“ソング機能”、さらにAUX IN端子を使って音楽プレーヤーと接続できるなど付加的な部分も充実。初心者からヘヴィ・ユーザーまで、あらゆる層のドラマーが楽しく取り組んでいける機種だと思います。
▲DTX750K(¥325,500)[拡大画像を見る]
DTX700シリーズの上位セット。音源モジュールのDTX700、パッド・セットのDTP750P、シンバル・パッド・セットのDTP750C、ラック・システムのRS700からなる構成。※写真のフット・ペダルはセットに含まれない。
▲DTX700K(¥226,800)[拡大画像を見る]
コンパクトなラックを採用したDTX700K。音源モジュールのDTX700、パッドセットのDTP700P、シンバル・パッド・セットのDTP700C、ラック・システムのRS500からなる構成。※写真のフット・ペダルはセットに含まれない。
▲好きな音源を入れたフラッシュ・メモリをDTX700右横のUSB端子にセットして音声データを読み込む。同梱されるソフト“Cubase AI”を使って音を作り込むことも可能。
本体にプリセットされた膨大な音色だけでも十分に活用できるDTX700ですが、USB端子を介して音声データを読み取れば、自分のオリジナル・キットを組むことも可能です。……と言っても意味がわからない人もいるかもしれませんね。簡単に言えば、自分の欲しい音は何でもDTX700を通して鳴らせるということ。お気に入りのドラム音源サウンド、自分で録音した“マイ・スネア”のサウンド、好きな曲のフレーズ、そして自分の叫び声(!?)などなど、コンピューター内に取り込める音は何でも鳴らせるようになります。そのためにはパソコンで音声ファイルを扱う技術が必要になりますが、それは同梱されている“Cubase AI”というソフトで作り込んでいくことが可能。あとはヤル気次第です。今回私は、自分で愛用している生ドラムのサンプル音の取り込みに挑戦しましたが、あらかじめファイルを準備しておいたため、DTXでの操作は実に簡単でした。しかもその音質は、プリセットと遜色ない高音質で再生されて大満足。現場に立ち会ったスタッフ一同も、思わず「オーッ!」と声を上げてしまうほどに心地良いサウンドが出せました。細かい強弱の反応などは、精細に作りこまれたプリセット・キットに軍配が上がりますが、「この音が絶対欲しい!」というものがあれば、積極的に取り込んでみるといいでしょう。筆者自身、今回の試奏の中で最もトキメいてしまった機能です。
▲従来のDTX-PADと同様、リアルな打感を実現する“TCS(テクスチャード・セルラー・シリコン)ヘッド”を採用。
DTX-PADは、先に発表されていた最上位機種“DTX900”シリーズのパッドとして開発されました。まったくの新素材である“テクスチャード・セルラー・シリコンヘッド”の採用により、リアルで気持ちの良い打感と驚くほどの静粛性とを実現。今回のDTX700シリーズでは、高性能はそのままに、ひと回り小さなサイズ(XP80、XP70)がラインナップに加わったことで、セット全体をコンパクトかつ手軽に組むことが可能になりました。他にもヤマハのパッドにはいろいろなタイプやサイズが用意されているので、必要に応じてさまざまなオリジナル・セットを構築していけるのも大きな魅力ですね。
電子ドラムを心地良く叩ける状態を作り出すためには、ラックシステムも重要な要素。今回の新DTXシリーズのリリースに合わせて、RS700、およびRS500という新デザインのラックが登場しました。特にRS700はシンプルかつ機能的で、安定性も抜群。タム類やシンバルのセットには、ヤマハのアコースティック・ドラムと同じ方式を使っているので、セッティングの自由度も高いですね。練習用から本格的ライヴまで幅広く使えます。ひと回りコンパクトなRS500もとても実用的で、スペース的に限られた場所で使うのであれば、こちらのラックを使うというのもいいですね。
▲DTX750K用のRS700ラック(¥38,850)
▲DTX700K用のRS500ラック(¥28,350)
ビギナーの中には「電子ドラムって何がどうなっているの?」という素朴な疑問を抱えている人もいると思います。そういう方達のために、電子ドラムの基本からQ&A方式で解説しておきましょう!
A:一番簡単な方法は市販のヘッドフォンを使うことです。また、スピーカーをつなげば、そのスピーカーから音を聴くこともできます。スピーカーは“モニター用”などと記載されたものをお勧めしますが、中でも、電子ドラムに特化したタイプ(ヤマハMS40DR など)を使うと、電子ドラム本来の迫力ある音を楽しむことができます。
A:本物のドラムを住宅地でドカドカと叩けば、それは確実に近所迷惑となりますね。でも電子ドラムをヘッドフォンで聴きながら叩けば、周囲にはパッドの音しか聴こえないので、本物のドラムよりもはるかに小さな音で済みます。特にDTXで採用されている“TCS ヘッド”の静粛性は優れているので、安心して練習できるでしょう。
A:これは電子ドラム特有の悩みどころです。聴こえる音は静かなのに、床下には振動が伝わってしまうというケースはあるんですね。キック・パッドの下にマットを引いたりすることである程度は軽減できますが、完璧な防振は難しいところ。どうしても気になる場合、DTX700ではハイハット・コントローラーのHH65をキックパッドとして使うこともできます。練習の時間帯によって、本物のペダルと使い分けるというのもアリでしょう。またヤマハではキック振動吸収板、たいこばん(TKB1/¥18,900)という製品も扱っています。
A:以前の電子ドラムは、ラックから配線からバラバラで自宅に届いたので、ドラムがわかる人でも組み立てには相当に苦労する状態でした。でも、最近の電子ドラムはその点にも十分に配慮されています。特にラックは悩みどころでしたが、RS700やRS500は、ほぼ組み上がった状態で届き、あとは脚部を広げるだけで基本が出来上がるのでとても楽になっています。それでも組立てが難しいという方は、ヤマハドラムWEBサイト(http://jp.yamaha.com/drums/)のDTX700&500シリーズ組立て動画を参考にしてみてはいかがでしょうか。▼ここではDTX750K、DTX700Kの組み立てを観てみましょう。
A:もちろんできます。これは電子ドラムなら必ずできる機能といってもいいですね。DTXシリーズであれば“AUX IN”という端子があるので、携帯プレーヤーやCD プレーヤーをコードで接続するだけでOK。ヘッドフォン、スピーカー共に音楽とDTXのサウンドをミックスして聴きながら練習することができます。必要なコードは購入する楽器店で聞いてみましょう。
A:これは“自分の必要に応じて選ぶ”が基本です。自宅練習だけが目的であれば、低価格帯でも十分だし、ライヴや録音でも使うのであれば、グレードの高い機種を選んだ方が良いでしょう。いずれの場合もスタンド類の安定感はとても大切。叩いているうちにドンドン崩れていくようでは大変ですね。その点、DTXシリーズはヤマハドラムの技術が注ぎ込まれているので、どれも安心して使えます。
●DTX700(音源モジュール) ●DTP750P(パッド・セット):スネア・パッド(3ゾーン/10インチ)×1、タム・パッド(3ゾーン/8インチ)×3、キック・パッド×1、スネア・スタンド(SS662)×1 ●DTP750C(シンバル・パッド・セット):3ゾーン・パッド×3、(15インチ×1/13インチ×2)、ハイハット・パッド×1、シンバル・ホルダー×3(CH750×2、CH755×1)、ハイハット・スタンド(HS650A) ●RS700(ラック・システム)
※写真のフット・ペダルは別売り
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●DTX700(音源モジュール) ●DTP700P(パッド・セット):スネア・パッド(3ゾーン/8インチ)×1、タム・パッド(1ゾーン/7インチ)×3、キック・パッド×1 ●DTP700C(シンバル・パッド・セット)3ゾーン・パッド(13インチ)×2、ハイハット・パッド×1、ハイハット・スタンド(HS650A) ●RS500(ラック・システム)
※写真のフット・ペダルは別売り
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●[音色数]ドラム&パーカッション:1268/その他:128 ●[ドラム・キット数]プリセット:50/ユーザー:10 ●[ソング数]プリセット:63曲/デモ曲:2/練習曲:44/パッドソング:17 ●[エフェクト数]バリエーションエフェクト:42種類/コーラス:6種類/リバーブ:6種類/キットEQ:4バンド/マスターEQ:3バンド
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●[接続端子]トリガー入力1〜11/HI-HAT CONTROL/HH-KICK(以上、ステレオ標準フォーン端子)/OUTPUT L(MONO)/OUTPUT R(標準フォーン端子)/PHONES(ステレオ標準フォーン端子)/AUX IN(ステレオミニ端子)/MIDI IN/OUT/USB(TO HOST、USB TO DEVICE)
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DTX900、700のクオリティを受け継ぎ、コンパクトなボディに449 種類の高品位音色をはじめ、自宅練習にもってこいの多数機能を内蔵したDTX500。この500シリーズにも、DTX-PADを採用した本格セットから、よりコンパクトなセットまで3種類がラインナップ。DTX540Kは、新ラックRS500を基調に、スネアに8"の3ゾーンDTX-PAD(XP80)、3つのタムに7"の1ゾーンのDTX-PAD(XP70)、2枚のシンバルに3ゾーンのシンバル・パッドを採用したモデル。DTX520Kは、新ラック、スネアのXP80はそのまま、タムをTP65にしたモデル。どちらも左右110cm、奥行き100cmに収まるコンパクトさ。DTX500Kは基本装備を備えたコンパクト・キット。左右74cm、奥行き52cmという省スペース!