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  • エコでコスパも高くてライブでもガンガン使える新世代マーティン!

斎藤誠が弾く!思いっ切り使える新世代マーティン〜GPCPA4、000X1AE、DXMAE、DRSG

Martin / GPCPA4、000X1AE、DXMAE、DRSG

  • 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:大屋努

戦前の仕様を忠実に再現した第5回「マーキス・コレクション」から一転、今回はマーティンの新世代モデルを紹介してみたい。環境に配慮した新しい製法の素材を用い、ライブでもそのまま使えるようピックアップをマウントし、さらにお手頃な価格帯に抑えるユーザー・フレンドリーな面も持つ⋯⋯そんな“思いっ切り使える”新世代モデル4機種を斎藤誠氏にじっくりレビューしてもらった。

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斎藤誠が弾く!パフォーミング・アーティスト、X、ロード・シリーズ
GPCPA4 / 000X1AE / DXMAE / DRSG

斎藤誠が語る! あらゆる局面で思いっ切り使える
マーティン新世代モデルの魅力

環境にも配慮したマーティンの新世代エレアコ
パフォーミング・アーティスト、X、ロード・シリーズ

 2016年のアコギ界にとって最大のニュースのひとつは、ワシントン条約で全てのローズウッド(学名Dalbergia属)が、商業目的の取引は可能だが、輸出国政府の発行する輸出許可証が必要となる、附属書IIのカテゴリーに組み入れられたことだろう。マーティンでも、歴史的にブラジリアンやマダガスカル、インディアンといったローズウッド材をボディや指板、ブリッジに使用してきた経緯があり、もっとも人気のあるD-28や最高峰のD-45などはローズウッド・ボディのアコギの代名詞的存在で、ファンとしては今後の動向が気になるところだ。

 とはいえ、マーティン社もこうした状況に無頓着だったわけではなく、むしろ木材資源の保護に貢献すべく長年に渡って様々なモデルを積極的に開発してきた。現行製品で言えば、FSC(森林管理協会)が認証した木材(サスティナブル・ウッド)を積極的に使用したサスティナブル・ウッド・シリーズを筆頭に、部分的にサスティナブル・ウッドを使用したロード・シリーズ、木材パーツの大部分に合板を使用したXシリーズなどがその代表例だ。今回は、フルサイズのマーティン・ギターの中ではもっともお求めやすい価格帯のエントリー・モデルとなるXシリーズと、そのすぐ上のクラスとなるロード・シリーズのモデルをメインに取り上げるが、どれもライブで積極的に使えるエレアコということで、パフォーミング・アーティスト・シリーズのモデルも1本ご紹介しよう。

 パフォーミング・アーティスト・シリーズは、その名の通りライブ活動を行なう現役ミュージシャンのために開発されたラインナップで、現代の音楽におけるアコギの使われ方や奏法、サウンドに対する要求に応じた設計になっており、全てのモデルでカッタウェイ付きボディを採用している。Xシリーズは、木材繊維を加圧加工して作られたハイ・プレッシャー・ラミネート(HPL)と呼ばれる板材をボディに、木の薄板を積層したストラタボンドと呼ばれる合板をネックにそれぞれ使用しているのが最大の特徴だ。ロード・シリーズには、ボディやトップに単板を使用したマーティンとしては最もお求めやすい価格帯のモデルがラインナップされている。

 マーティンのフラッグシップが揃う「40番台シリーズ」や戦前の仕様を忠実に再現した「マーキス・コレクション」などは、まさにマーティン・サウンドと長い歴史を体感できる、トラディショナルなマーティンの最高峰モデルと言える。その一方で、環境に配慮した新しい製法の素材を積極的に用い、ライブでも使えるようピックアップをマウントし、お手頃な価格帯に抑えたユーザー・フレンドリーな新世代モデルの開発に余念がないのも現代マーティンのスタンスでもある。今回はそんな“思いっ切り使える”4機種を、斎藤誠氏にたっぷりと弾いてもらい、その魅力を語ってもらった。

Martin Performing Artist Series
GPCPA4

Performing Artist Series / GPCPA4


GPCPA4(Back)


ドットの径を小さくして低音弦側に寄せた、モダンなデザインのポジションマーク。

出力周り。9Vのバッテリーはエンドピン下のパネルを引き出して出し入れする。

フィッシュマンのF1アナログ・プリアンプ。コントロールはトーンとボリュームでチューナーも内蔵。

 サウンドと機能の両面でライブにおける実用性を追求したパフォーミング・アーティスト・シリーズには、ロード・シリーズと同等のモデルからスタンダード・シリーズ並みのモデルまで、幅広い価格帯のものが揃っている。GPCPA4は中間ぐらいに位置するモデルで、マーティンの伝統的なスタイルではなく、グランド・パフォーマンスと呼ばれるモダンな形状のカッタウェイ付きボディを持っているのが特徴だ。ピックアップ・システムには、チューナーとピエゾ・ピックアップ&プリアンプのフィッシュマンF1アナログを搭載している。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:サペリ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●ピックアップ・システム:フィッシュマンF1アナログ ●定価:260,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 個人的に、マーティンのエレアコはシンプルな方が好きなんですが、これは比較的それに近い感じですね。デモはキーがGでロー・コードの多いメロウな曲ですから、ロー・コードのテンションが上手く伝わるようなギターで弾きたかったので、生音のきれいなこの楽器を選びました。爆音じゃないけれど、響きがきれいなので、この曲も弾きやすかったですね。低音から高音までワイドレンジな音で、今までになかったマーティンですね。音にやさしい膨らみがあるので、個人的にニール・ヤング弾きと言っている、指の腹でミュートするピッキングがやりたくなります。ドレッドノートだと膨らみ過ぎちゃうんですよ。アンプを使うとより効果が出ますね。

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Martin X Series
000X1AE

X Series / 000X1AE


000X1AE(Back)


漆黒のリッチライトの指板とブリッジ、べっ甲柄のピックガードが、ビンテージ感を演出。

サウンドホール内に仕込まれた、フィッシュマン・ソニトーンのコントロール部。

バッテリー・ボックスと一体化したソニトーンの出力部分。

 ボディにHPLを使用したXシリーズの中では上位のモデルで、トップ材にはシトカ・スプルースの単板、サイドとバックにはマホガニー材の柄がプリントされたHPLをそれぞれ使用している。ネックは積層合板のストラタボンドで、人工の柾目とでも呼べそうな構造は強度的にも安心感がある。指板とブリッジには、紙の繊維に樹脂を含侵させて固めたリッチライトを使用。光沢を抑えた漆黒に仕上げてあるので、エボニーのような外観を持っている。000タイプだがスケールは25.4インチなので、実質的にはOMに準じたギターと言える。ピックアップはフィッシュマンのソニトーンを搭載している。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:マホガニーHPL ●ネック:ストラタボンド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:A-フレームX ●フィッシュマン・ソニトーン ●定価:130,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 トップがシトカ・スプルースの単板というだけで、かなり音量がありますね。実質OMで僕のメインのギターと同じということもあって、いちばん弾きやすい印象でした。DXMAEもそうですが、弦高が低めの設定なので、弦が指板に当たるぐらい強くピッキングしてアタックを強調するような弾き方もできますね。弾きやすいので、デモはいちばん音の動きの多い曲を選びました。余裕を持って弾けるだろうという期待にちゃんと応えてくれましたね。生音が大きくて、ピックアップも音をよく拾ってくれる感じです。単音のリード弾きに使っても良いし、僕はやらないけれどエフェクトを乗せたり、エレキと持ち替えたりするのにも向いているでしょうね。

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Martin X Series
DXMAE

X Series / DXMAE


DXMAE(Back)


HPLのリアルなスプルース・パターン。ヘリンボーンのロゼッタが心憎い。

人工柾目とでも言うべき、安定度の高いストラタボンドのネック。

チューニング・マシンは密閉型のロトマチック・タイプを採用。

 ボディにもトップにもHPLを使用した、マーティンのフルサイズとしては最も廉価なXシリーズを代表する、ドレッドノート・タイプのエントリー・モデル。ピックアップはフィッシュマンのソニトーンを搭載している。ネックにはストラタボンド、指板とブリッジにはリッチライトと、ありとあらゆる部材に人工素材を使用しているので、耐候性が高い。ボディの鳴りはそれなりだが、抑制が効いているのでむしろハウリングに強く、大音量を出す必要のある屋外でのライブでも心置きなく使えるギターだと言えるだろう。
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【Specification】
●トップ:スプルースHPL ●サイド&バック:マホガニーHPL ●ネック:ストラタボンド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:X-シリーズX ●フィッシュマン・ソニトーン ●定価:120,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 僕のリトル・マーティンもネックがストラタボンドですが、“端材を集めて作っているからエコなんだよ”って言うと、女の子たちから“えー、ステキ~! でも、綺麗よね!”なんて言われたりするので満足していますが(笑)、1弦から6弦までのバランスも悪くないし、練習スタジオに持ち込んでバンドと一緒に弾き語りするには絶対良いと思います。部屋で出しっぱなしにしておいて、気が向いた時に手に取って弾くのにも良いですね。ネックを持った感じはやっぱりマーティンで、演奏性は高いですね。アンプで鳴らした時には派手に行こうと、いちばん陽気な曲を選びました。いつも自分の傍に置いておいて、仲良くなれるギターだと思います。

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Martin Road Series
DRSG

Road Series / DRSG


DRSG(Back)


オール・ブラックでまとめられたシックなサウンドホール周り。

ボディ材のシリスは、ローズウッドによく似た木目を持つ。

ヘッドプレートはHPLだが、ローズウッドの木目模様は非常にリアルだ。

 2016年夏に発表されたばかりのニュー・モデルで、オール単板のエントリー・モデルをラインナップしたロード・シリーズの1本となるDRSGは、サイドとバックにシリスという材を使用しているのが特徴だ。この聞き慣れない名前のネムノキ属(学名Albizia属)の材は、ローズウッドとマホガニーの中間的なサウンドを持つと言われ、赤味がかった深みのある茶色の木目は、マーティンのドレッドノートに良く似合う、トラッドな印象を与える。トップ材はシトカ・スプルースで、ピックアップはフィッシュマンのソニトーンを搭載。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:シリス ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX ●フィッシュマン・ソニトーン ●定価:215,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 今回試奏した4本を生音で弾いてみて、いちばん高級感があると思いました。見た目もグロス仕上げで、たとえばスタンダード・シリーズのD-28ともそんなに変わらない高級感があったので、繊細さが映えるような、ちょっと細かいフレーズが出てくるような曲を選びました。実際に弾いてみてもその期待に応えてくれて、今回の4本の中では、これまでに試奏した上位機種と比べても遜色のない感じでしたね。そういう意味では、コストパフォーマンスがかなり高いんじゃないでしょうか。アンプを通して弾いた時にもその印象は同じでしたが、生音の時とはキャラクターが違うので、生とエレアコで2種類の個性が楽しめるんじゃないでしょうか。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 今回は、曲によっては指弾きにしようかと思っていましたが、各モデルの違いがわかるように全部ピック弾きにしました。4本全てに共通して言えるのは、生音とアンプを通した音は全くの別物と考えても良いぐらいで、自宅で弾く時と仲間とライブをやる時とで、違うギターを使っているようなバリエーションが楽しめるということだと思います。マーティンを買う時には、生音で選ぶのかエレアコとして選ぶのかをはっきりさせておくのが良いんですが、この4本は基本的にどれも、エレアコとして選ぶギターだと思います。とはいえ、DRSGなんかは自宅で生音で弾いても満足できますね。Xシリーズとロード・シリーズの3本は、“こんなに安くていいの?”っていうぐらい、目的に応じた役目を十分に果たしてくれると思います。ストラタボンドやHPLを使っていても、シャリーンというサウンドやダイナミックレンジが揃っている感じなど、マーティンらしさがちゃんとあるのは素晴らしいですね。フィッシュマンのソニトーンは、僕が最近使っているブラックスモークの000-17にも付けてもらって大活躍しています。フィッシュマンのアンプとの相性もぴったりですが、やはりピックアップと合わせて設計しているんでしょう。パフォーミング・アーティストのモデルは、トラッドなマーティンには無い個性も持っていますが、昔の栄光に浸るだけじゃなく、新しいものも作っていくぞという上昇志向を感じさせますね。

斎藤誠が弾く! MARTIN TIMESバック・ナンバー

マーティン・マーキス・コレクション〜HD-28V、D-28 1941、D-18GE、000-28EC
マーティン“個性派”モデル〜D-15M、000-16GT、00L-17、000-17
マーティン・スタンダード・シリーズ超定番モデル〜D-18,D-28,D-35,000-18,000-28
マーティン・スタンダード・シリーズ40番台〜D-41, D-42, D-45, 000-42, OM-42
マーティン・スタンダード・シリーズ〜DC-28E/OMC-18E/GPC-35E

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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