AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Gibson Acoustic / Bob Dylan SJ-200
ボブ・ディランとギブソンによるスペシャル・コラボレート・モデル、Bob Dylan SJ-200。過去にギター・メーカーとエンドースしたことがないディランが、ついにその名を冠したギターをリリースしたとして注目を集めているモデルです。連載第28回でも速報したとおり、本モデルにはCollector's/Player's の2エディションが用意されていますが、今回はより実戦向けなPlayer's Editionをチェックいたします。
ギブソン・フラットトップの最高峰、SJ-200。1937年のデビュー当時、17インチ幅と深胴ボディが放つ大音量はかなりの衝撃をもって迎えられました。“口ひげ”を連想させるブリッジの意匠も素晴らしく、まさに“キング・オブ・フラットトップ”の名に恥じない名器です。50年代に“J-200”と改名してからも人気は衰えず、やはり“キング”と呼ばれたエルヴィス・プレスリーが愛用、その他無数のアーティストがSJ-200/J-200を使用しました。ボブ・ディランもそのひとり。「レイ・レディ・レイ」「今宵はきみと」などの名曲をフィーチャーした1969年のアルバム『ナッシュヴィル・スカイライン』では、J-200を片手に微笑むディランの姿を見ることができます。
J-200の愛用者として知られるディランですが、非常に用心深い人物としても知られ、自分の作品やレコーディング、演奏に関すること以外でインタビューやエンドース契約を結ぶことはほとんどありませんでした。今回のプロジェクトにあたり、ギブソン側もディランのマネジメントにようやくたどり着いたものの、ディランのPR会社やPRディレクターは誰かと尋ねても、戻ってくる答えは、「いません、ありません」の一点張りだったとか。「我々の回答は常に誰が相手でもNOなので、PRディレクターはいない、というのが我々の回答です」という答えが返ってくるほど、難しい交渉だったようです。もちろん、最終的にはディラン側とギブソン側での深い信頼関係が結ばれ、ディランはギブソンに心酔したとか。そのような経緯があったからこそ、この芸術的なSJ-200が誕生したわけです。
それでは、Player's Editionのサウンドをチェックしていきましょう。
前述のとおり、Bob Dylan SJ-200は、本人が所有するSJ-200をレプリカしたものをもとに、ヘッドに“eye”ロゴ、サウンドホールのラベルに直筆サインを施したCollector's Editionと、それに比べてより積極的なカスタマイズを施したPlayer's Editionの2種類が存在します。今回試奏したのは後者、Player's Editionです。こちらには予めL.R.バッグスのピックアップ、Anthemが装着され、ステージでの即戦力として使用できるのも嬉しいところですね。またボディ・トップ材はCollector's Editionがシトカ・スプルース、Player's Editionがアディロンダック・スプルースを、サイド&バック材も前者がフィギュアード・インディアン・ローズウッド、後者はメイプルを採用のため、サウンドはかなり異なるはずです。
動画をご覧下さい。試奏では鼈甲ピックを使いましたが、そのせいもあって中〜高域が非常に明瞭なサウンドです。これは、サイド&バックがメイプルということも関係しているでしょう。一方、ボディ・サイズから想像するようなトゥーマッチな低域はなく、全体にバランスが良い印象。弾き語りはもちろん、バンド・サウンドの中でもしっかり抜けてきそうな音です。また、ピックを使ったアルペジオでは、アタックがはっきりしていて、発音がとてもキレイな点が印象的です。新品の本器をケースから出してすぐのサウンドが、これです。もう少し弾き込めばさらにこなれた鳴りになることは間違いないでしょう。
想像以上にバランスが良い明るいサウンドと、芸術的な意匠のSJ-200。ボブ・ディラン・ファンはもちろん、即戦力のアコギを探している人にもオススメの1本です!
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは5月15日(金)を予定。
価格:¥616,000 (税別)
価格:¥1,230,000