CF-100Eの特徴

　オリジナルCF-100Eは、1951〜1958年にかけて生産された、ギブソン社初のフラットトップ・エレクトリック・アコースティック・モデルです。むき出しのP-90（エレクトリックでお馴染みの“ドッグ・イヤー”や“ソープ・バー”といったカバーが付けられていません）をボディに埋め込んだ個性的な仕様は、当時、大きな衝撃を持って受け入れられたに違いありません。その特徴は、まずフラットトップ・モデルとしては初めて、鋭く尖ったフローレンタイン・カッタウェイを導入した点。当時のギブソンは、ES-175に代表されるようにエレクトリック分野ではこのカッタウェイを導入していましたが、フラットトップのギターにもいち早くこれを導入したのは流石、非常に先進性があったと言えます。実際、このデザインは今でも古さを感じさせませんし、もちろんハイポジションの操作性も良好です。

　次に、P-90ピックアップを搭載したギブソン初のエレアコ・モデルという点。ギブソンのビンテージ・エレアコと言えばJ-160Eが有名ですが、本器はそれより先に発表されています。そして、ポジション・マークにディッシュ・インレイをあしらい、レス・ポール的なネック・シェイプを有していた点。本器は1951年、レス・ポールは1952年発表ですから、レス・ポールよりも早かったわけです。本器の先進性が、ご理解いただけたでしょうか？　

　実はこれまでのギブソン・アコースティックの数あるアーティスト・モデルの系譜の中で、CF-100Eをもとに生産・発売された例は過去にありません。それが今回、日本人ギブソン・アーティストとして知られる奥田民生氏のモデルとしてリリースされたのですから、これは大きなトピックです（奥田氏はJ-45を愛用することでも有名）。なお、本器の製作にあたって、ご本人所有の50年代製CF-100Eのネックをプロファイルし再現したそうです。

　それでは限定生産のTamio Okuda CF-100E、その魅力を動画でチェックしていきましょう。

Tamio Okuda CF-100Eのサウンド

　ハードケースを開けた瞬間、私はまずその独特なカラーに目を奪われました。これは奥田氏のフェイバリット・カラーで、フィニッシュ名は“フェイデッド・チェリー”ですが、これまでに見たどのフェイデッド・チェリーとも違う色味に感じられます。それもそのはず、この色味と質感を出すために初めて“Thin Natural Cure Nitrocellulose Finish”という極薄のニトロセルロース・フィニッシュを採用したようです。その他、カッタウェイ、インレイ、むき出しのP-90を搭載した分わずかにブリッジ寄りに設けられたサウンドホールなど、個性的なポイントが満載です。

　肝心のサウンドは、スプルース／マホガニーの比較的小ぶりなボディも影響してか、音が散らばり過ぎずにまとまってくれる印象。中域が強めで、きらびやかに鳴るというよりは素朴な感じの味わいです。高域や低域が過剰に出ることもないので、録音の時には扱いやすいでしょう。抱え心地やネックのグリップ感も良好で、取り回しが良く、自宅などで弾く際についつい手が伸びるタイプのギターと言えます。本器は主に生音での使用を想定しており、出荷時にブロンズ弦を張っていますが、仕様から想像するに本器でしかアウトプットできないサウンドを持っているはずです。この強烈なルックス、扱いやすい音、そして取り回しのいいサイズ感。奥田民生氏のファンならずとも、手にしていただきたいギターです。

※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは11月07日（金）を予定。