“桜ギター”10周年となる2024年の干支を冠した“辰桜”
- 2024/12/12
Gibson Custom Shop / L-5 Premier Vintage Sunburst
このL-5 Premierは、間違いなく現在ギブソン社の製作するギター・ラインナップで最上級のモデルであると言えます。スペックや細部の説明で物語る様なモノではなく、ギター本体から漂うオーラーやギターを手にしたときに感じる質感から、その事実は伝わるでしょう。
ギブソン社の中でもギター製作にかける時間が十分に取られ、使用される材は勿論、精度とクオリティにさらに磨きをかけて製作される「カスタムショップ・コレクション」よりも、さらにハイエンドに位置する「Gibson Custom Crimson」ライン。このラインはギブソン社の中に設けられたセクションでありながら、通常のライン生産とは全く異なるスタンスでギターを製作する、言うならば「個人製作家」の製作スタンスを持ったセクションで、ギブソンのファクトリー・ストックの中でも最も高いグレードの木材を使用し、細やかなインレイ・ワークやネック・シェイプ等、製作家が納得できるまで作り込む事で、ギブソンの「トップエンド・ライン」を生み出しています。
今回試奏したL-5 Premierは、まずギターを抱えた際のウエイト感やバランスからして「良質」というイメージを持たせてくれるギター。昨今は、ジャズ・ギターと言ってもオーセンティックな製作過程を無視し、少々ラフな言い方をすれば「形だけのフルアコ」が氾濫する中で、こういったストイックに製作された楽器は貴重だと思えます。良質なアコースティック楽器ならではの響きを持ち、きちんと弾かないと狙ったトーンが出てこないあたりや、12フレットから上下5フレット前後のバランス、ピッキングの後から付いてくるボトムや倍音の豊かさが素晴らしい。緩い箱ものギターではコントロールできない、立体感のある音像を聴くと、L-5を愛用したギタリスト達がなぜこのモデルをチョイスしたのかが良く理解できます。
ノン・ピックアップのアコースティック・モデルという事もあり、ジャジィなアプローチは勿論ですが、ブルージィなフレーズにも良く合います。このギターをギブソン社ではなく、個人製作家の工房で製作したら……さらに高額なギターになってしまうでしょう。良いギターと言うのは材のスペック以上に、そのギターを製作するためにかけた時間がものを言います。腕のたつルシアーが時間をかけて製作したギターは、ネック・シェイプやフレットの仕上げは勿論、ボディ・アーチのシェイピングやネック・ジョイント付近での鳴り方に違いを感じる事ができます。ここからこのギターを育てて行く、その格別の喜びも含めて本当にプレミアムなギターだと思います。
価格:¥1,191,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。