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サドウスキーの実戦向けストラト・モデル3機種を三井律郎(THE YOUTH)が徹底チェック!
History of Sadowsky〜シビアなプロ・ミュージシャンの目線から生まれた元祖工房系メーカー
1979年、ニューヨークにてリペア・ショップとして産声を上げたサドウスキー。当初は楽器の改造や修理などが専門で、名ベーシストであるマーカス・ミラーが所有する1977年製フェンダー・ジャズ・ベースのモディファイを手掛けたことでも知られる。その傍ら、顧客のプロ・ミュージシャンの意見を参考にしながら、カスタム・オーダーというスタイルでオリジナル楽器の制作を開始。その第一段がフェンダー・ジャズ・ベースのスタイルを踏襲しながらも、アクティヴ・サーキットを搭載したコンポーネント・モデルであった。プリアンプによる多彩なサウンド、剛性の高いネックが生む優れたプレイアビリティは、ニューヨークのスタジオ・ミュージシャンの間で評判を得る。その後、ギターの製作を開始。フェンダーのストラトキャスターやテレキャスターなどのデザインを踏襲したコンポーネント・モデルを中心に、即戦力として使える実用性の高い楽器として評価を得て、確固たる地位を築く。
サドウスキーは本拠地ニューヨークで生産されるNYCシリーズのみだったが、現在では同社の創立者ロジャー・サドウスキーによる監修の下、日本で製造されるMetrolineシリーズもラインナップする。今回はテスターとしてTHE YOUTHのギタリスト、三井律郎を迎え、Metrolineシリーズのエレキギター、R1 ClassicとR2、R3の3機種を試してもらった。デモ動画では持参ペダルを併用し、CUSTOM AUDIO AMPLIFIERから出力して収録。サドウスキーならではの堅実かつ端正な音色を映像でもチェックしてもらいたい。
三井律郎がサドウスキー・Metrolineシリーズを試奏!
Metroline R1 Classic
弾き手のニュアンスを最大限に引き出すシビアな1本
R1 Classicは前モデルR1をリファインした1本。ボディに2ピースのアルダーを採用し、独自のコンター加工を施すことで身体へのフィット感を高めている。ネックは22フレット仕様で、グリップ・シェイプは前モデルからミディアムCシェイプへと変更され、握り込みやすく演奏時のストレスを軽減している。ピックアップはSuhr ML Classicを搭載し、弾き手のニュアンスを最大限に引き出すことを可能とした。
ストラトらしいすごく繊細な楽器
三井’s インプレッション
「僕は普段からR1 Classicを使っていますが、一言で表わすとすごく“繊細”な楽器です。ピックアップの特性上、弾き手のニュアンスをしっかりと表現してくれるので、ある意味ではシビアです。その分ピッチも良いので、例えば同期モノが入ったライブ現場でも、音がまっすぐ出てきてくれます。分離感も素晴らしく、複雑なコードを鳴らしても奇麗に響いてくれるし、エフェクトのノリも良いですね。ネックは予想したよりも握った感じはガッシリしていますが、とても弾きやすいです。全体的にはとてもストラトらしいキャラクターの楽器だと思います。」
Metroline R2
ハムバッカーを搭載したオールマイティーな1本
R2は軽量かつアコースティックな特性を持つライト・ウェイトなボディを実現するために、サドウスキーの代名詞とも言えるディンキー・シェイプを採用し、ボディ・サイズは通常のストラト・タイプと比較して一回り小さくなっている。ペグにはスパーゼル製のロック式を搭載し、チューニングの安定性を向上させてた。ピックアップはサドウスキー・オリジナルをS-S-Hでレイアウトすることで、多彩な音楽性にカバーする。R1をより現代的に進化させたのがこのR2とも言えるだろう。
ハイ・ゲインかつ重心が低めで扱いやすいサウンド
三井’s インプレッション
「リアのハムバッカーが印象的ですね。僕は普段、リアのピックアップは使わないことが多いのですが、例えばバッキングをセンター・ポジションで、ソロを弾くときにリアのハムを使うと、ブースターっぽく音量を稼げるのが便利ですね。ピックアップに加えてR1とR2ではペグも異なるせいか、ハイ・ゲインでロー~ミッドが詰まったような重心の低めの音。弾き手としては扱いやすく感じるのではないでしょうか。音色のバリエーションも広く、試奏した3本の中では一番多様性に富んだモデルだと思います。」
Metroline R3
EMGピックアップを搭載したモダンなキャラクター
こちらもR2と同じくボディにはディンキー・シェイプを採用。Rシリーズとしては唯一、EMGのピックアップを搭載している。スティーヴ・ルカサーも愛用するEMG 85とSLVによるロー・ノイズな特性は、レコーディングからライブまで幅広く対応し、そのサウンドはシリーズ中で最もモダンなキャラクターを発揮。また、ブリッジはRシリーズすべてに共通してトレモロ付きのゴトー510 TS FE1をマウントし、引き締まったトーンと安定したサステインを生み出す。
ロー・ノイズなので宅録派にピッタリ!
三井’s インプレッション
「僕の人生で初のEMGピックアップ体験でした。CDで聴けるようなギターの音がしますね。優秀なコンプレッサーがかかっている感じというか、適度なハイファイさも良いです。あとロー・インピーダンスなのでボリューム・カーブもパッシブの楽器と比べて自然なので、これ1本で何でもできる印象です。音の伸びが良く力まなくても音が出るため、弾いているうちに自然と左手の方に意識がいきますね。ロー・ノイズな特性なので、宅録派のギタリストにピッタリだと思います。」
総評:スタジオ系のミュージシャンに愛される、楽器としての基本力の高さが魅力
「3本に共通して言えるのは、楽器としての基本レベルが高いことです。まずピッチ感が良くて発音も早く、サステインもしっかりあるので、弾いていて弦が柔らかく感じます。特に高音域で和音を弾いても音が揺れないし、音が詰まるポイントがないところにも楽器としての質の高さを感じます。
もうひとつ言っておきたいのは“出荷段階での弾きやすさ”です。僕は普段、ギターを購入するとライブやレコーディングでデビューさせるまでに何年もかけてセッティングを詰めることが多いんですが、サドウスキーのR1 Classicを弾いたときに、初めて出荷状態で“このまま使える”と思えた楽器でした。
最初はサドウスキー=スタジオ・ライクな楽器というイメージでしたが、実際に使ってみるとバンドやライブでも使いやすい。スタジオ専門の楽器というよりも、スタジオ系のミュージシャンが愛用するだけの理由がある……そんなオールマイティーに使える質の高いギターだと思います。」
Profile
三井律郎(みつい・りつお)
10月31日生まれ。1999年にロック・バンドTHE YOUTHに加入し、その後2007年頃からLOST IN TIMEのサポート・ギタリストとしても活躍。同バンドはエモーショナルでメロディックなバンド・サウンド、独特の世界観を持った歌詞で人気を獲得し、アコースティック・ライブ、海北大輔(vo、g)のソロ・ライブなど、多彩なライブ活動でも定評を得ている。最新作は同年9月にリリースされた『LIFE IS WONDER』。
◎三井律郎 Official Twitter
◎THE YOUTH Official Website
◎LOST IN TIME Official Website
試奏で使用したエフェクター
今回の試奏では、三井氏自身のエフェクター・ボードを駆使してMetrorlineシリーズのポテンシャルを十分に引き出してくれた。ここで彼が動画で使用したエフェクターを紹介しておこう。
T-REX / COMP NOVA:クリーンサウンド用
FULL TONE / CLYD WAH DX
クラウザーオーディオ / HOT CAKE 3knob:浅いクランチ用
klon / ケンタウルス:HOT CAKEと併用して使用。深いクランチ用
XOTIC / BB PLUS :ソロ用
MXR / analog chorus:今回の動画では使用せず
line6 / M13:リバーブ、ディレイ、ループなど、空間系にのみ使用